恋に恋した5秒前
「ありがとう」
遠慮なんてしない、とびっきりの笑顔に僕はおどらされた。
そっちのほうがいい、下手に遠慮されるより、気が楽。
「そうそう、恋はどこの国にいたの?」
キィィ、と自転車を止める。
信号が赤だ。
「えっとね、アメリカ」
「アメリカかあ…」
「だからチアやってたの!!!」
…そっか。
「…ボーイフレンドとかいた?」
どうしてか気になってしまう。
そのことが。
「いたことないんだ。フラれてばっかり(笑)。あ、青になったよ」
白くて細い彼女の指が、信号を差した。
…好きだ。
胸がきゅうう、と締め付けられるような、この感じ。
初めてだ。