恋に恋した5秒前
翌日。
僕は少しだけ早く家を出た。
今日は土曜日。
明日の総体に向けての最後の練習。
「レン!」
「恋!」
体育館に着くと、恋が体育館の床をモップで拭いていた。
…そうじしてんの?
そう聞くと、笑顔で彼女は言う。
「少しでも力になれたらなと思って。バッシュがキュッっていう音あたし好きだしね(笑)」
なぜきみは、こんなにも周りを見ているのだろうか。
なぜきみは、僕の「申し訳ないな」という気持ちを見透かして、嫌味っぽくない言葉を選ぶのだろうか。
なぜきみは、こんなにも素敵に笑うのだろうか。