恋に恋した5秒前




6時。

部活を終えて、僕は一目散に家へと帰った。
今日は恥ずかしくて、あまり恋には話し掛けられなかった。


少し空が暗くなってきて、駅に向かうまでに何人か浴衣を着ている人を見かけた。


恋も、浴衣、着てるのかな…



少しの期待と不安を心に、僕は駅へ着いた。




「レン!!!」


こっちこっち、と手を振るのは、高橋と恋だった。

二人共、浴衣を着ている。


高橋は雰囲気そのまま、紺色に金魚柄の浴衣。
髪を珍しくあげていた。

恋は薄いピンク地に小花柄の明るい浴衣だ。
髪もくるくる巻いていた。

可愛い。


そう思ったけれど、口にするのは恥ずかしい。



「遅れたごめん〜」

息を切らしながら、京平が走ってやって来た。

京平、気合い入ってんなあ、その格好。


すると京平が僕の耳元でこう言う。


「気合い入ってんな、お前」



お互い様だよ。





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