恋に恋した5秒前
「あたしも、レンって言うの。赤羽恋!」
彼女のくしゃっとつぶれる笑顔は、僕の心を捕えて離さなかった。
「そうなんだ、僕は最上蓮。よろしくね」
少し動揺しながらも、「それ」を隠すように微笑んで答えた。
ところで、
「なんで僕がレンって分かったの」
ああ、そう彼女はつぶやくと答える。
「髪の毛が真っ茶色で…くるんってなってるコが、「レーンー!」って呼んでたから」
くるん?
ああ、あいつ、京平だ。
「京平って言うんだ。あいつ、パーマあててるらしいよ」
「へえ。オシャレなパーマだね」
「天パってごまかしてるけどな、先生の前では」
「そっか、校則破ってるもんね(笑)」
あれ、なんで京平の話ばっかしなきゃいけねえんだよ。
それに、早く体育館へ行かないと。
そう思った僕は彼女に言う。
「今から部活だから、行くね」