恋に恋した5秒前




「只今より、松元市立三島高校対浜坂市立難波高校の試合を始めたいと思います。両レギュラーは前に」


先輩達が相手校に一礼をして、位置につく。

ハチさんも出場していた。


足、大丈夫なのかな…



ピーッ、という審判のホイッスルで、試合が始まった。


全国に行きたい。




「右です右ー!」

「ハチさーん、ナイッシュー!!」

「今勝ってますよー!!!」

僕も必死で声をかける。


部員として、後輩として、仲間として。



だけど、応援しているチア達の歓声が、僕には痛かった。


『レンのときだけ、めちゃめちゃ応援するね!』

恋にそう言われて、先輩達に怒られるよと笑って言ったあの日。



ごめん、恋。

僕は試合には出られない。




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