恋に恋した5秒前



ホイッスルが鳴り、僕は直ぐさまハチさんが倒れている方へ走って行った。


右足首…って、捻挫している方の足なのかな。


「大丈夫ですか、捻挫してる方なんじゃ…」

僕がハチさんの足首を触ろうとすると、「触んな!」と手を除けられた。


いつも以上にピリピリした雰囲気の中、ハチさんはゆっくりと立ち上がり、右足をかばいながら歩いて行く。



「ハチ、お前足…」

キャプテンが駆け寄りそう言うが、「大丈夫だ」と言ったきり、ハチさんは何も言わない。



救護係の人が出て来て、ハチさんの足首を見た。

すると足首は大きく腫れていて。



試合は無理だな、

そう呟かれたあと、ハチさんの顔がにじむ。


僕はその光景を、見守ることしか、出来なかった。




< 86 / 152 >

この作品をシェア

pagetop