恋に恋した5秒前
ホイッスルが鳴り、僕は直ぐさまハチさんが倒れている方へ走って行った。
右足首…って、捻挫している方の足なのかな。
「大丈夫ですか、捻挫してる方なんじゃ…」
僕がハチさんの足首を触ろうとすると、「触んな!」と手を除けられた。
いつも以上にピリピリした雰囲気の中、ハチさんはゆっくりと立ち上がり、右足をかばいながら歩いて行く。
「ハチ、お前足…」
キャプテンが駆け寄りそう言うが、「大丈夫だ」と言ったきり、ハチさんは何も言わない。
救護係の人が出て来て、ハチさんの足首を見た。
すると足首は大きく腫れていて。
試合は無理だな、
そう呟かれたあと、ハチさんの顔がにじむ。
僕はその光景を、見守ることしか、出来なかった。