恋に恋した5秒前
「大丈夫なんで。 見た目より全っ然痛くないっすよ。だから出ます。時間取っちゃってすみませんでした」
誰に向かって言ったのか、そう言うとハチさんはベンチから立ち上がった。
嘘だ。
絶対痛いに決まってる。
今も、痛そうな顔したじゃないか。
「ハ…」
僕が手を伸ばすのと、ハチさんが倒れるのは、同時だった。
「ハチさん。」
痛みますよね?
「…ごめん。」
僕の肩に腕をのせて、ハチさんはベンチへと戻る。
その光景を見ていた顧問は、つぶやいた。
「レン、行け。」