夏海<Natumi>
プロローグ
 切り立った崖っぷちに女の子が一人、海を眺めて立っていた。
 女の子は、潮風で靡く髪を掻き分けて座り込む。その瞳には、海を初めて見るようなワクワクした色と、失ったなにかを思い出そうとする色が、混じっている。
 崖の下の波は比較的穏やかで、崖にぶつかる水しぶきも小さい。
 女の子の後ろから、同年代くらいの男の子もやってきた。
「やっぱりココにいた」
 わかりきってる口調で話しかけた。
「いたよ」
 悪戯っぽく女の子が返す。
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