消えた恋人。
「すまんっ!オラは今日バイトなんだ。また次回行くよ!」
優のバイト先は一度だけ行ったことがあった。
そこは最近オープンしたラーメン店だ。味もなかなか悪くない。
「ならしょうがないね、また誘うよ。」
「おう、すまんでござるな!」
つぐみは優から離れ、帰ろうと教室を出ようとした。
「っあ、つぐみ」
優が呼び止め、優しく微笑んだ。
「なに?」
「山室君の前では、笑ってるんだよ?」
この台詞は、今日で何度目だろうか。
「ふふ、分かってる。」
そんなやり取りをしてからつぐみはいつも通り、あの病院へ向かった。
――ほぼ毎日見るこの病院。
外装は真っ白で新しさを感じさせるが、実は内装は少しボロい。
それはまるでつぐみのようだ。
毎日学校では明るくしているが、実は心はボロボロで今にも崩れ落ちそうだ。
いつも洋祐の側にいたつもりだったのに、何も気づいてあげれなかった。
何の支えにもなってあげれなかった。
だから、つぐみは毎日自分を責め続けている。
もし、自分がもう少し洋祐自信を理解していたら…洋祐の笑顔を見れてたかもしれない。
ほんとにバカだな、といつものようにつぐみはため息を漏らす。
つぐみはもうここに来すぎて、看護師とも仲良くなっていた。特に仲が良いのは、洋祐の担当の看護師の前原さん。
前原さんは6年前に旦那さんを病気で亡くしたらしい。
それだからか知らないが、つぐみとは色んな話ができ、気が合うようだ。