消えた恋人。
こんな空気やだよぉ...そう焦っていると、洋祐が口を開いた。
『そ、その...話ってなに?』
『っえ!あ、洋祐くん…その、私...』
『うん』
多分この時、洋祐は私が告白すると分かっていたんだろう。
焦っている私に、「早く言えよ」とも言わず優しく聞いてくれた。
『そのっ、私白道高校を受験しようと思ってますっ…』
『おっ、俺の後輩になるかもしれないのかっ!』
『その…受験しようとしたのには理由があって...』
『やっぱ県立だからか?そうだな~確かに勉強ついていくのは……』
今だ、今言わなきゃっ……
『違いますっ!洋祐くんが好きだから…』
声、震えてなかったかな…
洋祐の顔を直視する事ができなかった。
ちらっと洋祐の顔を見てみれば、目をまんまるにして口が少し開いたままだ。かなり驚いたようだ。
『!?…えっと…』
っあ、ダメ。
『は、はい…』
『どう言えばいいのかな…』
なに?この反応。
絶対嫌われたじゃん。
もう嫌だっ…どうしよう...
フラれるの分かってるから、答えを聞きたくなかった。
『返事はまた明日でもいいか?』
っえ、それってつまり……
――期待しちゃっても良いんだよね?
『っあ、はい…!』
そしてその日はそれで別れた。
そして今に至る。
『おぉ~!って事は、今日このあと会うんだよね?』
『うん、でもフラれるよ…』
『今さら弱気になんじゃねえぇぇ!』
『はっ、はい!』
そんな少しふざけた勉強会が済んだ後、洋祐の家に呼ばれたのでマンションの4階へ向かった。
インターホンを鳴らすとドアが開き、デニムにポロシャツという、いかにも普通の男子高校生、洋祐が出てきた。
『入って』
『は、はい』
心臓がドキドキする。
今まで15年間色んな体験をしてきたが、ここまで緊張した事はないかもしれない。
洋祐の部屋へ案内されて、「適当に座ってて」と言われたから、部屋の端にあったソファに腰を下ろした。