消えた恋人。


こんな空気やだよぉ...そう焦っていると、洋祐が口を開いた。


『そ、その...話ってなに?』

『っえ!あ、洋祐くん…その、私...』

『うん』

多分この時、洋祐は私が告白すると分かっていたんだろう。

焦っている私に、「早く言えよ」とも言わず優しく聞いてくれた。

『そのっ、私白道高校を受験しようと思ってますっ…』

『おっ、俺の後輩になるかもしれないのかっ!』
『その…受験しようとしたのには理由があって...』

『やっぱ県立だからか?そうだな~確かに勉強ついていくのは……』

今だ、今言わなきゃっ……

『違いますっ!洋祐くんが好きだから…』

声、震えてなかったかな…

洋祐の顔を直視する事ができなかった。

ちらっと洋祐の顔を見てみれば、目をまんまるにして口が少し開いたままだ。かなり驚いたようだ。


『!?…えっと…』

っあ、ダメ。

『は、はい…』

『どう言えばいいのかな…』

なに?この反応。

絶対嫌われたじゃん。


もう嫌だっ…どうしよう...

フラれるの分かってるから、答えを聞きたくなかった。

『返事はまた明日でもいいか?』

っえ、それってつまり……

――期待しちゃっても良いんだよね?

『っあ、はい…!』

そしてその日はそれで別れた。


そして今に至る。

『おぉ~!って事は、今日このあと会うんだよね?』

『うん、でもフラれるよ…』

『今さら弱気になんじゃねえぇぇ!』

『はっ、はい!』

そんな少しふざけた勉強会が済んだ後、洋祐の家に呼ばれたのでマンションの4階へ向かった。

インターホンを鳴らすとドアが開き、デニムにポロシャツという、いかにも普通の男子高校生、洋祐が出てきた。

『入って』

『は、はい』

心臓がドキドキする。

今まで15年間色んな体験をしてきたが、ここまで緊張した事はないかもしれない。

洋祐の部屋へ案内されて、「適当に座ってて」と言われたから、部屋の端にあったソファに腰を下ろした。

< 5 / 7 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop