消えた恋人。
それにしても、じっと座っていることなんて出来ない。
どうしても、そわそわしてしまう。
それもその筈、つぐみは生まれて初めて男の子の部屋に入ったのだ。
『ここが洋祐くんの部屋か...あ、ベッド…』
ここは乙女の夢だ!
好きな男が毎夜寝ているベッドに、目を惹かれない方がおかしいモノだ。
つぐみはまず、部屋に誰もいない事を確認する。
『よし…!』
そして第2ラウンド。
ベッドに倒れ込んで枕をぎゅーっとするのだ。
『つぐみ、いっきまーす!』
誰だよ!というツッコミを誰からもくらわなかったが。
『3・2・1…』
カウントダウンと共に体を縮こまらせて……
『わりぃ、遅くなった!うまい具合にジュースが切れてて…』
『GOー!!』
―――ボフッ
白石つぐみ、15歳の夏。夏だけに春が過ぎ去りました。
こんなキャッチフレーズのようなものが頭に浮かびつつ、ほんの一瞬意識が…飛んではいない。
つぐみが今の状況を察するのに、そう時間はかからなかった。
『『あ…』』
二人ともが言葉を失った。
つぐみは見事にベッドにダイビング。
洋祐からすれば、面白いほどおかしな風景だ。
一つ下の近所の女の子を部屋に入れ、ドアを開けたら、いきなりベッドにダイビング!…だからだ。
洋祐は何て言葉をかければよいか迷った。
『えっと…何してるんだ…?』
『その…あ…ごめんなさい!』
洋祐は両手にコップを持ったまま棒立ち、つぐみは慌ててベッドから離れる。
『あはは…いいよいいよ』
洋祐は苦笑しつつ、テーブルにコップを置いたので、つぐみもおずおずとテーブルの近くに座り、洋祐と向き合うような体勢になる。