消えた恋人。


『…さっきの事は…忘れてくださいっ…』

『つぐみちゃんは面白い子だな、そんなに俺が好きなのか?』

はい!大好きです☆
何て言えないだろう。

しかもいきなりこんな事聞いてきて…何て答えれば良いか分からない。

『…えっ…』

心臓が苦しそう...。
これ以上鼓動早くなると、心臓が壊れそうだ。

『惚れてる女にそんな事されると俺、もう我慢出来ねえんだけど』

『え…?あっ…!』


――ドスッ


つぐみは言葉を理解する前に床に押し倒された。
頭は真っ白。

恐怖心もあったが、相手は一つ上の男、力のある方のつぐみでも敵うはずがない。

洋祐が自分の上に覆い被さっている。

自分の視界には、真剣な眼差しの洋祐と、部屋の天井が一緒に見える。


数秒間の沈黙の中で、つぐみはようやく洋祐の言ってる意味が分かった。
「惚れてる女」

つまり、洋祐と両思い――?

いや、変な期待はしちゃいけないんだ。

『…あ、あの…どういう意味なんですか…?』

『そんままだよ、』

洋祐はつぐみに這うような体勢のまま、言葉を続けた。

『一晩考えたんだ、返事を、ね。正直つぐみちゃんの事は前から気になってたんだ..でもつぐみちゃんは、俺ん事全然知んねえだろ?つか、知んねえ方が良い。俺、超が付く程性格悪いし。』

悲しそうな顔をしながら洋祐はごめん、と謝り、とりあえずつぐみから離れた。

『…違います!私、知ってるんです。洋祐くんがほんの少し前までボランティア活動をしてた事。』

洋祐のボランティア活動は、近所のおばさん達の井戸端会議を偶然聞いて知った事だ。

ボランティアは主に、町の清掃らしい。

そんな洋祐を見習い、つぐみも今年からボランティア委員に入ったのだ。

『えぇ!?おいっ、なんでその事…』

『とにかく、そんな事してる人が性格悪い筈はありません!たとえ洋祐くんがそうであっても、私は洋祐くんを好きでいられる自信があります!』


――私が洋祐くんの事が好きな理由は分かんないよ。だって、ぜーんぶ好きなんだから。



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