フタリの事情。
「そっか、そりゃ良かった」


「てっちゃんと同じ高校だもん、毎日楽しいよ。
今までみたいに放課後だけじゃなくて、いつでもてっちゃんに学校で会えるし」



……それ、どういう意味だよ?


どーせお前は俺のこと、「幼馴染のお兄ちゃん」にしか思ってないから、んなコト簡単に言えるんだろうけど。

俺はお前のこと好きなんだよ。


だから、そういうセリフ、笑顔で言われるとさ……

なんか、グッとくるよ。


バカみたいに内心喜んでで、素直に嬉しいのと。

『やっぱただの幼馴染にしか見られてないんだ』って、いちいち再確認して、苦しいのと。





――昔は。

昔は、こんなこと、思ったりしなかった。


ちっちゃい頃、りぃと一緒にいる時に感じていたのは、ただ嬉しいとか楽しいとか、そんな素直な気持ちだけだったのに。



りぃがオレの中で『幼馴染』から『好きな女の子』になった瞬間から、俺のバランスが少しずつ崩れ始めて。

昔は当たり前に出来てた『無意識』が今は出来ない。


『意識』なんてしないで、りぃといる時間を楽しみたいだけなのに。


苦しさとか辛さとか感じたくないのに。

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