フタリの事情。
知ってて当然。

そんな風に言ったワタルの言葉を聞き流すことなんて、到底オレにできるはずもなくて。


「はぁっ?」


頭の中に、またハテナマークが飛び交ってる。



「サッカー部の練習してる時とかさ、ファンの子の黄色い声援浴びてるでしょ?」


「それ、りぃも言ってたけどさー。
目当てはオレじゃないって!
うちの部カッコいいヤツ多いし、他のヤツラだろ?」


「じゃあ、月に何回も呼び出しされて告白されてるのはどう説明するの?」


「それは……別にファンとかじゃない、し。
告白……は、まぁ……その、されたこと、あるけど」


「下駄箱とロッカーに入ってるプレゼントとラブレターの数々は?」


「そ、それは……」


「この前は一年生に握手求められてたね~
あの子、感動してちょっと泣いてたっけ」


「………」


「まだ証拠、あげて欲しい?」


「……や、結構です」



自分がモテてる、なんて思ったこと、今まで一度もなかった。


でも、こうやってワタルの話だけ聞くと、俺……

俺、なんか本当にファンクラブとかあんのか?って、思っちまう。

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