フタリの事情。
末っ子、最強。


関谷家で一番権力が強いのは、我関せずでテレビを静かに見てる父さんでも、キッチンで味噌汁をよそってる母さんでも、兄ちゃん達でもない。

一番下の、ミツヤだ。



漂う怒りのオーラをひしひし感じて、一瞬で兄ちゃん達が口を閉じた。

もちろん俺も、“触らぬ神に祟りなし”ってなもんだ。



「で、誰が一番の原因?
睡眠妨害の理由は?」


イライラしながら始まったミツヤの尋問に、アツ兄もタツ兄も真っ先に俺を指差した。

こういう時の二人は息ピッタリで、迷わず俺を生贄に選ぶんだ。


理不尽すぎるだろぉ……



「テツ兄?」


……ミツヤ、どこでそのニヒルな笑みを覚えた?

お前、昔はあんな無邪気な笑い方してただろ!


「ち、違うよ!
俺は――」


「テツタがいつまでもりぃちゃんと進まないから~」


「タツ兄、余計なこと言わなくてい、」


「テツ兄は黙って!
タツ兄、俺に分かるように説明して?」


……万事休す。

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