フタリの事情。
図書室の戸を引くと、りぃは前と同じ席にちょこんと座ってる。

読んでる本に夢中なのか、今日は俺に全然気付かない。



「お待たせ、りぃ」


ぱっ。

呼びかけるとすぐに反応して、


「てっちゃん!
お疲れ様、早かったね」


歯をみせて、にっこり笑顔。



あぁもう。

筋トレしながら心の準備してきたはずなのに、何で動揺するんだ?


りぃの笑顔は、10年見続けてきてる。

なのに、見る度にときめく俺の心臓、どうなってんだよ。


いい加減、慣れろよなぁ……


「何読んでんの?」


「“世界遺産”!
タイトル通り、世界遺産についての本」


「そりゃまた……
渋いモン読んでんなぁ」


「そうかな?
写真付きで、説明と色んなエピソードも書いてて面白いよ?」


全く興味ないものでも、りぃが言うと本当に面白そうに聞こえるのは、やっぱ惚れてるせい?

俺って本当、単純だよな……

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