フタリの事情。
「それじゃ、本棚に戻してくるね?」


「待ってりぃ、俺が持つから」


机の上に積みあがってたのは、図鑑並みにぶ厚い“世界遺産”が1~5巻まで。

りぃには重すぎるだろうから。


「で、どこの本棚?」


「あ、ありがと……
こっち、15番Aの一番上なんだけど」


りぃについてって、指差した先を見上げると、


あー……ホントに一番上じゃん。

踏み台か、はしごでもないと、俺でも届かない高さだ。


“世界遺産”なんてコアなもの、りぃ以外誰も読みそうにないもんな。

てーか、こんな図書室の隅っこの、目立たない場所にある本、よく見つけるよなぁ。


俺だと完全スルーだぞ。



「てっちゃん、わたしが棚に入れるね。
一冊ずつ渡してもらってもいい?」


「りょーかい。
重いからな、はい」


「ん」


どっからか持ってきたボロイ木の踏み台に登って、まずは一冊受け取ったりぃ。



……あれ、大丈夫か?

なんか足元ぐらぐらしてねぇ?

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