フタリの事情。
「て、てっちゃんっ……
そんな大声出しちゃダメだよっ。
し……しー……」


「えっ」


あっ……そう、か。

そうだよ、ここ図書室だよ!


つーか、そんなこと気にしてる余裕、マジでないんだってば!

あの、ふにってした感触が、感触が……思い出すな俺!


逆に、何でりぃはさ、んな冷静でいられんの?

俺はもう……情けないけど、正直、どうしていいか分かんねぇよ……


スマートに「ごめん」とか言えるほど、平常心保てねぇ。


……やっぱこれ、キモチの温度差ってヤツ??


「あの……ホントにごめ、」


「こっち見ないでっ」


「おわっ?
ちょっ……」


俺の視界を隠した、りぃのちっちゃい両手。

なんか、やたら熱くて。


隙間から一瞬見えたりぃの耳の赤さに、そん時、初めて気付いた。


冷静だったんじゃなくて。

りぃがそう見えるように、必死に振舞ってることを。


「てっちゃん……の、バカ……
どうして……謝ったりするの?
わたしは……」

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