フタリの事情。
「り、い……?」


「……わたし、てっちゃんとなら……」


ドッ。

身体の奥の方で響いた大きな音が、自分の心音だって気付くのに数秒かかった。


それはどんどん大きくなって、もう俺の手に負えなくて。

りぃの言葉の続きを待ってる余裕なんてあるわけもない。



だめ、だったんだ。

キスなんかしたらタガがぶっ壊れる、なのに。


だめだって抑えろ、理性理性理性。

嫌われたくない、怖がらせたくない、大事にしたいんだろ。


分かってるよそんなこと。


でも――

あぁ、俺って結構意思弱かったんだな。


ごめんりぃ、もう無理。


好きだ。



目の上にあるりぃの手をそっとはがして、


「てっちゃ……っ……?」


そのまま、りぃをぎゅっと腕に閉じ込めた。



りぃ……好きだよ。

すげー好き。

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