フタリの事情。
「なんてか……うまく言えないけど。
りぃのこと怖がらせてたら、本当悪いと思ってる。
怒るのも……」


「怒って、ないよ?
ただ……ドキドキして……
うん、ドキドキ、する」


「りぃ?」


「怖くもなかったよ、少し、苦しかった、けど……
ね、てっちゃん……
聞いてもいい?」


「何を?」


「今の……どうして?」


「え?」


「どうして……ぎゅってしたの?」



後戻りできない。

腹をくくれ、って。


耳のずっとずっと奥の方から、そんな声が聞こえた気がした。

誤魔化したりすんのは苦手だし出来ないし、何より、りぃに失礼な気がする。


ここまで来たら、はっきり言うしかない。


それに今言わないと、俺一生言えない気がする。

10年間、想ってた言葉。


どうして、なんて。

理由は一つだけで。


「俺……俺、りぃのこと――」

< 87 / 89 >

この作品をシェア

pagetop