愛を知らずに叫んだ彼女はもう僕の元に返ってこない。
幸福造方法
今日も明日も昨日も俺は湯に入る。
昨日は感じなかったが背中がヒリヒリする。ほんの少し。
湯から上がって鏡を合わせて背中を見ると、笑った口のような細い三日月が沢山散らばっていた。少し赤い。たまに10本組の線がオレに引かれてる。
この背中の絵を作ったのは今はベッドでスヤスヤ眠る俺だけの最愛。この背中写メして俺の遺影にでもしてみようか。『俺はかわいい彼女を愛してます』って。
こんな傷さえ愛しくて、泣きそうだ。
とりあえずコーヒーを飲んで、彼女の隣に潜り込んで彼女が起きるまで寝顔の観察をしよう。
起きた彼女は寝ぼけ目で俺を見て、ふへへ、とぐにゃんと笑って、俺の指示通り風呂に入って頭を覚ます。ちょうどそのころ、俺はリビングの救急箱から何にでも効く白い塗り薬を出す。
あとは彼女が少し複雑な顔で俺の背中に薬を塗って、それに笑ってありがとうと言うだけ。
幸福製造方法