お家に帰ろう。
明に聞かれまいと
なんとか誤魔化した将人は、

明の母親が葉月おばさんだと分かったが、
あの男と言う人物と、
父親が誰なのかは分からなかった。


だいたい、12歳の子供に、
なぜ、明が養子として、上條家にやって来たかなど、
考えられる余裕は無かった。


そして、

戸籍上の家系図で、
姉妹となっている明と遥は、
理化学的には、従姉妹にあたると判明した将人。

しかし、

連れ子再婚である自分が、
明とは“他人”であることに気付くのは、
中学になってからだった。



将人が十歳になった年のある日のこと…

それは毎年、大雨が降ろうとも、将人だけ、上條家の墓前で、手を合わせさせられる日だった。


2分の一成人式として、
父親から、実母の話を聞かさることになった将人だったが、
その時はまだ、実母に対する感情も、
(後に解決した)父親への不満も湧くことはなかった。


しかし、明の事を盗み聞きした時、
詳しい内容は分からないにせよ、自分より悲しい境遇にあることは感じ、
そんな明に同情した。


これが、大人に対する不信感を、将人が抱く原因とさせたのだ。


この時はまだ、兄として明を見ていた。


明の面倒を見ることで、
明を自分の見方に付けたつもりだったのかもしれない。

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