お家に帰ろう。
時は過ぎ、
反抗期を迎えた将人だったが、
しばらくして、
父親の誤解は解けることとなり…なんとなく平穏を取り戻せた気がした今、
明について、真実を聞くことに気が引けてしまっていた。


想像だけが勝手に膨らみ、どうしても気になって仕方がないまま、
高校生になった将人は、
原付きバイクの免許取得を口実に、弥生のそばに近寄ると、一か八かの賭けに出る。


「原チャリ?」

「そう。だから住民票が必要なんだ。」

「なら私が取ってきとくわよ。」

「いーよ。友達と一緒に行くから。」

「どうせ今日、出張所の近くに行くし。」

「…なに?俺ってそんなに信用ねーの?」

「あは?あはは、何言ってるのよぉ。」

「それとも他に、見られちゃマズイことがあるとか?」

「…お父さんから聞いて、もう知ってんでしょ?」

「でも、明のことは未だなんだけど…」

「…」


想定内のタイミングと弥生のリアクションだった。


「…どうしてそれを?」

「ずっと前、立ち聞きしちゃった。」

「ねぇ…」

「大丈夫。誰にも言ってないし…言えないよ、こんなこと。…ただ危なかったんだぜ。あのあと明も起きて来て、オレが居なきゃ聞かれてたよ、きっと。」



この頃には、
血の繋がらない母と息子の親子間に、それ以上の何か…約束した覚えは無いが、互いに協力し助け合う精神と言うか…信頼関係が築けていた。


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