お家に帰ろう。
「ひでー…」


将人に、なんとも言えない怒りが込み上げてくる。


「一度は、自分から別れを切り出していたんだからと…葉月がその男を悪く言うことはなかったわ。」

「ふざけんな!なんだよ!言いなりじゃんか!」

「葉月は、その男の背景にあるものが悪いんだって言って…この先、彼が幸せになれるのかを心配してた。」

「人が良すぎんだよ!」

「愛してたの!だから明を産んだの!最初は私も反対したんだけど…自分にも覚えがあったことだったから…」

「…遥のこと?」

「そう!私にとって、遥が人生の新たな始まりだった。なんだかんだあるけど、やっぱり幸せだもの私。だから葉月の応援をすることにしたの!そして明は生まれ…この娘に“明るい”未来がありますようにって…葉月がつけた名よ。」

「で…この家に?」

「自分が育てたんじゃ未来が暗いからって。」

「…」

「もし明の存在がバレてしまったら、その時は…あの男のように、企業のコマにされるんじゃないかって。」

「だって向こうがおろせって!」

「それでも生まれてしまったの!だから、絶対にバレてはいけないの!わかる?」

「あ…。」

「自分の娘を、姪っ子として相手しなければならなかった、葉月の気持ちをさっしてあげて!」


そう熱く語る弥生の、
見たことのない表情に圧倒された将人は、

(言ったら…この家には居られねーだろ俺…)


明はもちろん、父親にも知られぬことを弥生と誓ったのだ。

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