お家に帰ろう。
そのうち廊下でモノ音がして、

(帰るのかな?)

二人の様子を一目見てやろうと、屋上に向かう明。


一階に聞こえぬよう、そーっと階段を上って行くと、

屋上のドアの、遅れて閉まる音に驚かさられた。


二人は、帰ったのではなく、屋上に上っていたのだった。


ドアの硝子から覗き込む明。


少し長めのストレートヘアーで、毛先だけ軽く巻いた、ほんのり茶髪の彼女の後ろ姿は、夕日に照らされ眩しかった。


将人と同じ、高校の制服を着ているだけなのに、
中学生から見た彼女は、大人っぽく映って見えた。


手すりに向かって立ち、景色を眺める二人。


将人が指を差し、街並みを説明している様子がわかる。


(あ。まーくんは着替えてる。)


会話は聞こえないが、肩を並べて、時には目を合わせ楽しそうに話している二人に、明は嫉妬した。


(あんな顔するんだ…)


隣の彼女の顔を覗き込み、
優しく笑いかけている将人。

すると、彼女は首を伸ばし、
二人は軽くキスをした。


それを見た瞬間、ドアの硝子部分から、サッと身を隠した明…

見てはいけないものを見てしまった。


身内のラブシーンが気持ち悪いとかではなく、
あまりの衝撃に、その場に座り込む明だった。

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