お家に帰ろう。
それからと言うもの、

将人の携帯電話をいじる姿に、イラっとする明は、

その場に居るのも嫌だったが、
その様子も気になって仕方がなかった。


夏休み中“友達の家で勉強する”と、帰ってこなかった将人が、
何処で何をしているのか、想像しては腹を立て、
八つ当たりのようにピアノを弾いては、高ぶる気持ちを誤魔化した。


将人のことは、何でも知ってるつもりでいた明なだけに、

“あたしの方が知ってるのに!”と、彼女への対抗心を掻き立てられ、
“負けるもんか”と言う気持が、どんどん違う方向へと走らせる。


雑誌を見てメイクを覚え、
お洒落にばかり気を配る明だったが、
家族はそれを“年頃の反抗期”としか見ていないようだった。


そうやって、いつも子供扱いされる自分でも、
彼氏さえできれば、きっと将人も同じレベルで見てくれるはず……キスなんてどーってことない!


そんなことを考えている裏で、
将人と共通する、テニスにも没頭する明は、

夜、壁打ち練習の自主トレーニングをはじめた。


そこは、
将人も練習に使っていた場所で、引退前には何度か連れてきてもらったことのある、家から少し離れた所の公園だった。

そのため、
他の者達に先越されていた時は、練習せずに、そのまま帰るしかなく、

女の子が独り、一番乗りで練習していても、
後から来た者達に、調子良く乗っ取られ、
悔しい思いでペダルをこぎ、渋々家路に向かうなんてこともあった。


そんなことが続いた、ある日……
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