お家に帰ろう。
「やっべ!行こうぜ!」


慌て立ち去る三人を目で追いながら、

「あそこの生徒が喧嘩だなんて…おい、大丈夫か?」

店主が心配して声をかけてきた。


確かに3対1では、誰もが将人を被害者と思うだろう。


吉岡も、喧嘩慣れしているワケではないため、逃げるために路地に迷い込んだが、人目を避ける場所を選ぶほどの余裕はなかったらしい。


おかげで、将人の怪我も、そこまでで済んだ。


「違うんです。けしかけたのは俺なんですよ。」

「え?」

「だから、通報はしないで下さい。お願いします。」

「…」


怪我人にそこまで言われては、

「君がそれで良いなら…」

と、店主は眉をひそめて言う。


「きっと明日の学校じゃ、いつ呼び出されるのかってビクビクして過ごすだろうなぁアイツら。この辺の住民は、登下校中に少しでも素行が悪いと、すぐに連絡を入れてるらしいんだ。」

「じゃあ、しばらくは良い薬になりますかね。」

「だな。」

「あはは、痛てて…」

「おい、大丈夫か?」

「…はい。お騒がせしました。」



将人は、ポケットを擦りながらキョロキョロと辺りを見渡し、尻の後ろ横に落ちた携帯電話を拾うと哲司を呼びつけ、タクシーでマンションへと帰って行った。

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