お家に帰ろう。
「…なんで?」

「あたしのこと探してたみたいで。」

「…で?」

「知らなかったんだって…あたしが生まれてること。」

「だから?」

「やっぱり嬉しいって」

「ふざけんっ!…てぇ」


勢い良く起き上がり、
脇腹を押さえてかがみ込む将人は

「ほらー、興奮しない。」

と、添える明の手を掴んで、不機嫌そうに続けた。


「おまえも嬉しいの?」

「…嬉しいよ。」

「はあ?!」

「こればっかりは、まーくんにも分からないよ!」

「!」

「凄く嫌なヤツだと思ってたら、優しそうなジェントルマンだし…あたしのこと嫌がらなかった!あたし、生まれてきて良かったんだって!葉月おばさんのことも、凄く残念そうに」

「それが向こうの手なんだって!親権振りかざして、おまえを奪い取ったら、企業発展のために、どっかの野郎と結婚させるつもりでいるんだよ、きっと!」

「そんなことない!“困ったコトがあるなら相談しなさい”って、言ってくれただけだよ!」

「…あんの?困ったコト。」

「だって、兄妹のままじゃ…結婚できないもん…」

「…言ったのか?」

「まさか。」

「ふー(速攻、引き離されるよ)…明…騙されるなよ。」

「分かってる!もう!…もう会わないから。」

「…ごめん。」

「あたしも…黙って会ったりしてごめん。反対されると思ったから。」

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