お家に帰ろう。
「哲司君だね?」

「え?」

「あー、さっき、持ち主本人から連絡が入ってね、事情を話したら、彼に渡してくれれば大丈夫だと言ってましたよ。」


男はニコニコしながらそう言った。


「そーっすか!」

「はいコレ、電話です。わざわざすまなかったね。」

「え?あ、いいえ。」


そんな、まるで自分のことのような言い方に、男の顔を二度見する哲司。


優しく微笑むその様子に、やはり何処かで見かけた自信が増す。


「では、失礼します。」


立ち去ろうとする男を、必死に思い出そうとするあまりに、

「あ!あとで本人に礼をさせます。連絡先教えてください。」

とっさに呼び止めていた。


「礼なら、さっきの電話で言われましたよ。それで十分ですから。」

「でも、」

「それにね、礼などされることじゃないので。」

「されることっすよ!これには情報いっぱい詰まってるんすから!」

「…」

「あ、おたくみたいな立派な人からしたら、たいしたことないもんだろうけど…」

「今の君を見れば、その大切さが分かりますよ。」

しっかりと見つめてくる男と、その目が合った時、


「あ!?」

「はい?」

「おじさん、ご近所さんじゃないっすか?」

「え?」

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