お家に帰ろう。
「そーでした。ついね。」


将人は椅子の背もたれにもたれ、大きく伸びをした。


「面倒くさいんだ。」

「ちぃーがうって。」

「責任感じちゃってる?」

「そりゃ感じるよ。」

「え?」

「だって、男の子だもーん。」

「…」

「そこらの高校生と違って、責任だってとっちゃうよん。」

「ふっ。」

「変なこと言ってないで、受験に集中しろ。」


そう言って、明の頭をクシャっと撫でる。


「うん。」


そして、笑みを浮かべる明の横顔をしばらく見つめ…

「ん?」

「いや、なんでもない。」

慌てて目をそらすのだった。


何かを守ろうとしていた。


家族・体裁・トラブル・将来・絆


全てが二人にとって大切なこと。


自分の気持ちを抑えさえすれば、今まで通り、普通の家族として当たり前の日常を過ごせることが、結局は幸せなんだと考える。


そんな将人の気持ちを、知ってか知らずか、
波風を立てまいと女子校を選んだ明は、
この先、裏切ることがあった時、この家での自分の存在に、正直、不安を感じていた。
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