お家に帰ろう。
「この前も、妊娠中の方が同じように…」

明の耳元で囁く駅員の声が頭の中に響いてくる。

「…」

「すみません!でも学生さんですものね…」

「あ、朝、何も食べなかったから、元々貧血気味なんで。」

「医務室もありますが」

「あ、いいえ!父が医者ですので…電話してみます。」

「そうですか。じゃあ、とにかく座って…」


明はとりあえず、ホームのベンチに腰掛けた。


「何かあったら声かけてください。」

「はい。」



冷静を装ってはいるものの、内心は、パニック寸前の明。


(落ちつけ…)


この胸が張るのも生理が近いからではなく…よく考えてみれば、先月からそう思いながら、もう、今月も半ばを過ぎていた。


すると明は携帯電話を取り出し、

ゆっくりとボタンを押しはじめるのだった。



「あ、もしもし、あたし。…うん。朝からごめんなさい。ちょっと話があって…」



電話を切ってしばらくしてから、なるだけ空いている電車に乗り込む明を、さっきの駅員は不安そうに見送った。

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