お家に帰ろう。
時計は8時30分を過ぎていた。

「なんだろう明?連絡も入れないで!」


もう一度電話をかけるが、やはり繋がらず…

「あ、てっちゃん?」

哲司の携帯電話にかけてみた。


「どうしたんすか?」

「ごめんね。明、知らない?」

「まだ帰らないんすか?」

「そーなのよ。何も言ってこないから…弥生さんお腹空いちゃってね。」

「あはは。マサ君のとこは?」

「将人?なんで?」

「え…なんとなく…」

「…そーね、かけてみる!ありがとう!」

「すんません。」


弥生は指で電話を切り、すぐに将人へ電話をする。

が、

「でない!…バイトかな?」

やはり繋がらず…

キッチンへと2、3歩、足を運んだ時、

トゥルルル…トゥルルル…

電話が、その足を引き止めた。


「あ!きたきた!」


慌てて、番号の確認もせずに

「はーい。」

受話器を取った弥生は

「すみません。上條さんのお宅でらっしゃいますか?」

「あ、はい!…上條でございます。」


その丁寧な受け答えの男の声に、一瞬で身震いを感じるのだった。

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