お家に帰ろう。
「そんなことないっすよ!えっと…お名前は…?」

「あ、吉岡。」

「吉岡くん!遥の方で正解!」

「…あんたは何様なの?」

「だよね。俺も途中からそう思いながら言ってた。」

「こんな感じの家だから、吉岡くんもいつでも遊びに来てね!」


キッチンから参加している母も、安心したようだった。


「親が医者って聞いて、もっとオカタイ家なのかと思ってた。」

「全っ然!」

「開業医じゃないし。息子は違う道に進んでるし。」

「でも、お嬢様ってイメージあるなぁ俺。ガキん頃、ピアノの音とか聴いてたからか?」

「あー。それも今、誰も弾いてないからね。」

「調律狂ってた。」

「明、弾いたの?」

「ちょっとね。」

「遥が習いたいって言うから、実家から運んできたのに、すぐに辞めちゃって。」

「そーなんだ?明が弾いてるのしか知らないや俺。」

「てっちゃんママには、ホント良く教えてもらって…お世話になったわよねぇ。」

「明こそちゃんと習えば良かったのに…今じゃただの、葉月伯母さんの形見だよ。」

「俺、その人知らない。」

「そりゃそーだよ。ずっと前に死んでるもん。」

「だからあんたはこの家の、いったい何のつもりなんだって!?」


母親の笑い声が響いた。

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