お家に帰ろう。
ピンポーン――ピンポーン――


いつになく響いて聞こえるチャイムに、夫婦は目を合わせ、互いに頷きあった。


夫の敏男が玄関へと出向く。


そこには大貫康太郎と、その弁護人が立っていた。


「遅くなりまして申し訳ありません。」


第一声が、大貫本人の低姿勢な言葉であったことに、拍子抜けした敏男は、少しだけ肩の力が抜けた気がした。


リビングに通されると、すぐに弥生を見つけた大貫は、軽く会釈をしてから中へと進む。


そして、敏男と弥生の二人の前に立ち、

「ご無沙汰しております。突然の訪問となりましたことをご理解頂き、有り難く思います。」

毅然とした態度で、深々とお辞儀をしてみせると、


「と、とにかく、要件を聞きたい!おかけください!」


敏男の言葉で、4人は向かい合ってソファーに座ることができた。


そこから弁護人の出番となった。


「明さんも、もう16歳という年齢をむかえ」

「まだ16です!」


弁護人相手に強気な態度の弥生。


そこへ、大貫が一言。

「はい!そうですね。…しかし、突然、私の前に現れた明さんは、自分の意見を持つ、しっかりとした娘で、それでいて気持ちの優しい…素晴らしい女性に映ったのを憶えています。」

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