お家に帰ろう。
大貫の話し方は穏やかで、

「はかり知れない愛情をそそがれて育てられたんだと分かりました。」


その言葉も、全く嫌味を感じさせないところが、
何よりも、弥生には腹立たしく感じられた。


「あなたに、礼などされる筋合いはありませんから!」

「もちろんですよ。そんなおこがましいこと…ただただ、感謝の気持ちでいっぱいです。ご苦労もあったんではありませんか?」

「心配ありません!」

「お姉…弥生さん、」

「やめてください!」

「…聞いてください!私は明さんを貴方から奪おうなんて気は、さらさら有りません!」

「!」

「しかし、こんな私でも彼女の父親なんです!彼女が私を頼ってきた以上、力になってやりたいんです!父親として!」


そんな大貫を見て…


「話を聞かせてください。あの子に何があったんですか?」


冷静に問いかけたのは敏男だ。


「では、よろしいでしょうか?」


そしてもう一人、冷静であって当然の弁護人に対し、

「はい。」


弥生の手を握りながら返事をするのだった。



「実は現在、明さんにはお付き合いしている方がいらっしゃいまして…」

「…え?あ、はい…」


敏男も弥生も唾を呑み込み、
話の続きに身を乗り出していた。

< 253 / 278 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop