お家に帰ろう。
「もしかしてあんた…相手が誰だか知ってるのか?」

「明の希望を叶えてやりたい。ただそれだけです!」

「そいつに経済力はあるのか?これは飯事とは違うんだぞ!」

「もちろん!…私だって色々と考えました。当面はバックアップするつもりでおりますし、」


その時、

「駄目よ…それじゃ、明が幸せになれない…」

はじめて弥生が口を開いた。


「…それは、どーゆーことでしょうか?」

「その相手をどうするつもりですか?明の子はどうなるの?どうせ貴方の企業のコマになるんでしょ?」

「…」

「それじゃあ葉月の我慢の…意味がなくなります!」

「…聞いてください。私は、あの会社の存続を考えるのなら、創業家が退くこともアリだと考えておりました。」

「大貫様!」

「良いんだ!この方々は知っておくべき事だ!」

「…」

「すみません。この通り私達夫婦には子供がおりませんが、この後時世です…子孫を残す手段ならば、幾らでもあります。しかし、妻にこれ以上、精神的不安は与えたくなかったのです。妹のところの娘を養子にすることだってできますし、妻の兄の次男坊にでも…そうなれば事実上、吸収されたも同然でしょう。そうなれば、妻の、あちらへの役目が果たせますしね。」

「…それなら、奥様は明の存在を」

「喜んでおります。」

「?」

「娘ができたと言って、明に付きっきりです。はじめは驚いていましたが…やはり、直径の血筋に越したことはないと思ったのでしょう。後継者問題では、かなり負担をかけていたようです。」

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