お家に帰ろう。
久しぶりに見る市川のプレイに、明は、あの頃の心境を思い出さずにはいられなかった。


試合中、激しい程に攻撃的な市川は、あの頃よりも、一段と男らしくなっていて、

(この人を振って自分が選ばれたと知ったら、まーくん、ますます調子に乗っちゃうだろうなぁ。…それにしても、ちょっと、惜しいことしたかな?)


色んなコトを考えながら、
市川から離れられずにいた明の目は、その光景を、しっかり目蓋の裏に焼き付けるのだった。



「お待たせ!ごめんね!」

誰よりも先に、校門まで走ってやって来た市川は、
まだ、少し汗を滲ませている。


「良かったの?皆と帰らなくって」

「全然オッケー!」

「…なんか、変わったね?」

「そう?」

「うん。なんとなく…」

「惚れ直した?」

「それは前から。…じゃなかったら…(やらないよ!)」

「じゃあ、俺にも少しは、可能性があるのかな?」

「…テツから聞いてない?」

「聞いてるよ。…相手もね。それであの頃、情緒不安定だったんだ?」

「あたし?」

「今思えば…だけどね!」

「…おかしいな!あたし、市川君と居る時、結構、楽しかったんだけどなぁ。」

「そ?」

「緊張したり、ときめいたり、すべてが新鮮だった!」

「緊張なんかしてたの?」

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