お家に帰ろう。
そんなこんなで、
哲司の“誠実さの感じられない、声が大きいだけの進行”が、場の空気を和ませていた。



明のこれまでの人生には、
いつも近くに、この哲司がいる。


そのせいか二人の仲は誤解され、明に交際を申し込む者は誰もいなかった。


面倒くさがり屋の明にとって、
それは好都合だったのだけれど、

同じ条件のはずの哲司には、
何故か“彼女”という存在が居たこともあり…

結局、明に好意を持つ男子がいなかっただけなのかもしれない。


それに、明も、学校に好きな人はいなかった。


オマセな明からは、
同級生の男子が幼稚に見えていたのだ。


そんな明にとって、
今こうして、ここに居ることは、場違いと言って良いほど、
なんとも居心地が悪く、

さらに今、
自分の置かれている状況にも絶えきれず…

(トイレに行って誤魔化すか!)

と、立ち上がった。


「どうした?」


反対隣りに座る友達に聞かれ、

「トイレ」

他の言葉に変換できなかった明に、

「ストレートだなぁ。戻ってきたら席変わってるかもよ!イッチーとは、こそアド完了?」

哲司が投げた一言がきっかけとなって、

「じゃあ今…はい。」


ケータイを向けた市川だった。

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