お家に帰ろう。
「ご飯よ〜!」


母親の声に反応して、二つのドアが開いた。


「あれ?早いじゃん。」

「おまえの代わりに、テツのこと見送っといたぞ。」

「あ。そうだった。パソコンの調子が悪くてさぁ、見てもらってたんだった。」

「…あとで見てやるよ。」

「うん。」



リビングのドアを開けると、
煮物の香りと共に
軽快とは言えないミシン音が…


「何してんの?」

「家庭科の宿題。」

「あー。時間切れ?」

「学校のミシンの数が少ないの!」

「またまた〜。」


ミシンと悪戦苦闘しているのは、
長女で二番目の遥。


遥は、上條家に誕生した初めての女の子で、
おっとりしてるくせに、
真ん中の子の性格で、
負けず嫌いなところがある。


「あ〜!もーっ!曲がっちゃったぁ…はぁ、やり直しだぁぁ」

「じゃあ、先に食べちゃえば?」

「やることやっちゃわないと気が済まないの!」

「はいはい。」

そんな母に将人が言う。

「いーからほっとけって。」


頑張り屋なのに、報われないと言うか…

「不器用だからなぁ…(指先どころか性格も。)」

「こーら、シッ!」

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