お家に帰ろう。
そして、
――――『会いたい』

その一文が、

血の繋がりの無い兄妹の仲を修復させた。



そしてこれは数週間前のこと…


マンションで、将人の帰りを待つ明の前に、ひとりの女性が現われた。

彼女は、明の顔を見るなり、
大げさにも“この世の終わり”とそんな表情を浮かべ、逃げるように帰っていった。

その日から、
明がマンションへ行くことがなくなり、
その間の将人の夕飯代が、
実家までの交通費に代わった……

これが今回の揉め事の真相だった。


以前に、遥から聞いて知った、
吉岡に見られていたことを学習し、
普通の兄妹を装ったつもりだった今日、まさか後をつけられているとは気付かぬまま、
将人の部屋に辿り着いた二人。


ドアを開けた途端に、
馴れない一人暮らしの不便さに、顔を合わせ苦笑すると、
とりあえず、部屋を片付けはじめた。


明は言う…

「こーゆーのがいい!好きな人の世話ができるのがいい!」


そんな明を、将人は優しく抱きしめる。


「…久しぶり。」

「うん。」

「…もう、ナイと思ってた。だから、市川くんの良いトコ探しして、いろんな部分を発見していくうちに、嫌なことは目をつぶって…馴れていかなくちゃならないんだって…」

「馬鹿だな。」


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