お家に帰ろう。
「あ。」

「ん?」


上條家のそばまで来て、気がついた哲司は、

「今の…」

さっきすれ違った人の、後ろ姿を振り返って見た。


「知り合いか?」

「多分あの人、この前、道に迷ってた人だ…。」

「アハ。まだ迷ってたりして?」

「そりゃないっつーの!あははは…」


二人は笑いながら、上條家の中へと入っていった。



「なんだ?楽しそーだなぁ。」

「お邪魔しまーす。」

「いらっしゃい、てっちゃん。」


いつもの様に、元気良く振る舞う哲司だったが、
恐る恐る見た明と目が合うと、

「ここ座れば。」

自分の隣角で、父と向かい合わせの誕生日席に誘導され、

「あ、おう。」

素直に応じてみせた。


ぎこちない面持ちで席に着く哲司に、

「こないだのこと言ってないでしょうね?」

顔を近付け囁く明。


「当たり前だろ。」

「よろしい。あとで話があるの。」

「なに?」


そんな二人を見て、母が問いかけた。


「二人でコソコソと、なんの話?」

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