彼岸花の咲く頃に
しゃなり、しゃなりと。

優雅な足取りで、姫羅木さんはスーパーを出て行く。

その姿がまるで白昼夢のようで。

店を出て行った後、思わず俺も店外に出てみる。

「……」

決して歩く速度は早くなかった。

なのに俺が外に出ると、姫羅木さんの姿はもう豆粒ほどだった。

歩道をゆっくりと、山の方へと歩いていく。

ここまで歩いてきたんだろうか。

この先10キロは、山道が続いているというのに。



その日の事は、本当に『化かされたような』出来事として覚えている。


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