彼岸花の咲く頃に
軽い跳躍だったにもかかわらず、悪狐は上空へと到達する。

その五本の尾には、再び炎。

しかも先程の炎の比ではない。

悪狐自身の妖気を多量に含んでいるのだろうか。

禍々しい、毒気すら感じさせるほどの真紅の炎を纏った尾。

「焼き尽くしてやる!この土地も!山も!町も!人も!動物も!何もかも!お前の愛するここら一帯全てを炎で舐め尽くしてやる!」

それは、理不尽極まりない行為だった。

己の実力では敵わないと見るや、悪狐は冬城一帯を炎に染め上げるつもりでいた。

そうする事で、ただ苛立ちを発散させる。

身勝手極まりない悪行だった。

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