彼岸花の咲く頃に
「は?」

悪狐の笑いが止まる。

…石畳に立つ姫羅木さん。

その表情はいたって冷静だった。

「やってみぃと言っておる。そんな児戯で、わらわの縄張りを燃やせるものならばな」

「な…!」

その言葉に絶句したのは、悪狐も俺も同様だった。

「脅しだと思っているのか!私はやるぞ?これまでだって、幾つもの国や土地を滅亡に追いやってきたのだ!こんなちっぽけな土地を燃やし尽くすくらい、どうとでも…」

「じゃから…」

溜息をつき、顔を上げる姫羅木さん。

その眼は、震えが来るほどの冷徹さを帯びていた。

「やってみぃと言っておる」

「……!」

上空の悪狐が躊躇する。

主導権を握ったと考えていた筈の悪狐。

しかし、いつの間にか主導権は姫羅木さんに奪い返されていた。

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