彼岸花の咲く頃に
悪狐の尾が長く伸びた。

その先端から放たれる、禍々しい妖気を含んだ炎!

夜空を切り裂き、闇を照らし出すような、それは真紅の稲妻。

上空から叩きつけられるように降ってくる邪悪の鉄槌は、一直線に冬城の山へと振り下ろされ。

「!?!?!?」

地面に直撃する寸前、不可視の『何か』によって阻まれた。

あれ程の威力の炎が、何事もなかったかのように『何か』の力で相殺され、煙を上げて霧散する。

後に残ったのは、爆発の後の静寂。

再び冬城は何事もなかったかのような暗闇を湛える。

「結界じゃ」

姫羅木さんが呟いた。

「お主が躊躇しておる間に、冬城全域を包み込むだけの結界を張った。どこに炎を放とうと、焦げひとつ付ける事は叶わぬ」

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