彼岸花の咲く頃に
「ん?」

自分の尻で揺れている、ふさふさとした太い尻尾に視線をやる姫羅木さん。

彼女は尻尾と俺の驚いた表情を見比べる。

「お、ああ、これか」

別段慌てるでもなく、彼女は自分の尻尾を撫でた。

「そんな訳はなかろう。千春の早とちりめ」

「え、あ、ああ…そ、そうよな。そうそう、あはは…」

どんなに風変わりな人だろうと、姫羅木さんはれっきとした人間だ。

尻尾なんてついている訳が…。

言いかけた直後。

「!?」

彼女のスカートの中から、更に三本の尾が伸びてきた。

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