彼岸花の咲く頃に
「わらわ程の由緒正しい狐霊が、尻尾一本な訳がなかろう」

「っっっ…!」

彼女の論点は完全に違っていた。

というか、既に『人間前提』の話ではなくなっている。

狐霊!?

いわゆる化け狐って奴か!?

そりゃあ冬城は山奥だから、狐も狸も猿もいる。

だけどだけど、20年近くこの町で暮らしてきて、狐の妖怪と遭遇したのは流石に初めての事だ。

絶句する俺を他所に。

「まさか千春…わらわを小物の野狐(やこ)風情と一緒くたにしておったのではなかろうな?」

姫羅木さんは、尖った一対の狐の耳を、頭頂にピョコリと出した。

嗚呼…やばい…。

リアル獣っ子だ…。

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