彼岸花の咲く頃に
四本尻尾の化け狐。

昔、子供の頃に妖怪大図鑑か何かで読んだ覚えがある。

化け狐っていうのは長い時を経て、神通力を持つに至った狐の妖怪。

尻尾が多ければ多いほど強力とされ、有名な所では九尾の狐なんてのがいる。

神社仏閣に祀られているお稲荷様なんかも、狐霊の一種だ。

「いかんのぅ…人間は物の怪の類を見れば、すぐに呪われる憑かれる祟られると騒ぎ立てる」

四本の尻尾をユラユラさせながら、姫羅木さんは腕を組んだ。

「よいか千春。わらわは『善狐(ぜんこ)』というてのぅ、人間には危害は加えぬ。むしろ神格化した存在じゃ。故に特に姿形を隠す事もせぬ」

「は…はぁ…」

善狐だろうが野狐だろうが、とにかく人外の存在だ。

人間代表の俺としては固まるしかない。

< 17 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop