彼岸花の咲く頃に
「ここらに住む年寄りに訊いてみぃ。善狐に会うたといえば、数珠を持って拝まれるわ」

そう言って、姫羅木さんはしゃなりしゃなりと歩き出す。

四本の尻尾も、尖った耳も、隠す素振りすら見せない。

どうやら彼女のような狐霊に遭遇できたのは縁起物のようだけど、他にお客がいなかったのは幸か不幸か…。

「という訳で明日も来る。供物の稲荷寿司は準備しておくのじゃぞ?」

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