彼岸花の咲く頃に
翌日。

その日はいつにも増して客足が遠ざかっていた。

天気が悪いせいかもしれない。

ずっと雨が降り続いている。

山の天気は変わりやすい。

朝方は天気が良かったというのに、太陽が隠れないうちに雨粒が零れ落ち始めた。

『狐の嫁入り』

その言葉を思い出し、ふと姫羅木さんのノホホンとした表情を頭に浮かべた。

この気まぐれな天気も、もしかしたら彼女のせいかもしれない。

その時はそう思い…俺は天気雨を姫羅木さんのせいにした事を、後から後悔する事になる。



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